2010年2月25日

【連載】個人事業の実話「第1話:法人か、個人か、それが問題だ」

世界的な不景気が続く昨今、大手企業さえ倒産してしまうようなおかしな世の中。
ここまで来ると「派遣切り」とかいうレベルではなく、正規雇用者(正社員)であっても安心して働いていくことが難しくなってきました。

長いものには巻かれろ、という考えが効かなくなった今、社会人としての生き方の選択肢として、「独立」という道が改めて注目されているようです。
その独立の方法にも、株式会社や合同会社(日本版LLC)など「法人」としてなのか、個人事業主(フリーランス)としてやっていくのかによって大きく変わります。

一般的に、法人か個人事業かの分岐点は「売上800万円」などと言われます。これは税金をベースに損得を割り出した考え方ですが、個人的には「あまり鵜呑みにすべきではない」と考えています。
筆者自身は個人事業主として独立してもうずいぶんと経つのですが、個人事業としてのメリット・デメリットをきちんと把握し、うまく立ち回っていくことができれば、法人や、時には大企業にさえ真似できない「ならでは」のビジネス戦術を立てることも可能なのです。
何しろ、個人事業として開業した後ででも法人化(法人成り)することは可能なわけで、まずは自分の力量を測る意味でも個人事業主から始めるのが良いと思います。

また、まだ事業を立ち上げてもいない中で(売上が立ってない時点で)、できるだけ初期投資を抑えるというのは重要なことです。
2006年5月1日の会社法の改正によって最低資本金制度が廃止され、資本金1円での株式会社設立が可能になりましたが、

・定款に貼る収入印紙: 4万円(電子定款であれば必要なし)
・定款認証手数料: 5万円(現金)
・登録免許税: 最低15万円(収入印紙)
・その他(定款の謄本手数料など)

は必要で、自分で手続きを行ったとしても20万円以上はかかってしまいます。
尚、合同会社では登録免許税が6万円なので、電子定款を利用すれば実質6万円で設立が可能です(もちろん、会社の印鑑を作ったり諸経費は別途必要です)。
しかも、実際にはこの手続きを自分で行うのはなかなか大変で、その時間と労力を考えて専門の業者(行政書士など)に任せることが多いので、その費用もプラスになります(相場は1~3万円)。

一方の個人事業は、設立にかかる費用もなく、確定申告のために税務署へ書類を1枚提出するだけ。「え?これだけ?」と不安になるくらい簡単です。
こういった開廃業の敷居の低さを考えても、「まずは個人事業主として腕試し」という始め方はアリではないかと思います。

ただし、簡単・誰でもできると言って安易に独立するのは危険です。
というわけで、次回は「独立に向いた人・向かない人」についてお話します。

>> 【連載】個人事業の実話「第2話:独立に向いた人・向かない人」
>> 【連載】個人事業の実話「第3話:自分に何ができるか、何を生業とするか」

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